次の文で示す症例で罹患神経の絞扼部位に対する刺鍼部位として最も適切なのはどれか。「33歳の女性。主訴は右手掌の母指から環指橈側にかけての痛みとしびれ。妊娠中に発症し、出産後、家事と育児で症状が増悪し、物がつまみにくくなった。」
1→肘頭と上腕骨外側上顆の間は尺神経の通る場所で、ここが圧迫されると、一般的には「尺神経麻痺」や「野球肘」などの症状が出現します。今回の症例とは異なる症状になります。
2→肘頭と上腕骨内側上顆の間は尺神経と関連がありますが、この領域の圧迫は「尺神経管症候群」を引き起こす可能性があります。しかし、尺神経管症候群の症状は通常、手の小指と薬指にしびれや痛みが現れます。したがって、この症例には該当しないと考えられます。
3→橈側手根隆起と尺側手根隆起の間は、手根管に位置します。手根管症候群は、この手根管内の正中神経が長期にわたり圧迫されることで発症します。症状は、手の親指から中指、薬指の一部に痛みやしびれが出現し、特に夜間に症状が悪化する傾向があります。妊娠やリウマチ、肥満などで手根管内の圧力が上昇すると発症しやすくなります。
4→豆状骨と有鈎骨鈎の間は手の小指側にあたり、尺側神経が通っています。ここが圧迫されると、「Guyonの管症候群」と呼ばれる疾患が起こります。しかし、Guyonの管症候群では主に手の小指と薬指に症状が現れますので、この症例とは異なります。